さあ、次の罠の近くだ。昨日から冷え込んで珍しく雪がうっすら積もっていた。こんな天気だったら、鳥たちは罠に仕掛けた餌をきっと啄もうとするはずだ。しかし、さっきの4番目の罠までは仕掛けは動いていなかった。今日も難しいかなと思えてきた。それでも未だ、残りの罠はかなりある。
5番目の罠の場所に向かった雑木林の坂を上った。ところどころに鳥の通り道みたいな跡がある。これらは、ヤマドリやキジなどの大型の鳥の通り道だが、僕の罠に掛かるには大きすぎる鳥たちの道だ。いつかこんな大きな獲物を獲りたいと思ってはいたが、僕の仕掛けでは無理だ。
5番目の罠のばねの部分が木立の間から見えてきた。ばねの傾きで仕掛けが動いているかが分かる。動いているように見える。ドキドキする。さらに近くづくと確実に動いていることが分かった。段を1段登ると本体が見えてきた。飛び散った羽が見える。
「やった! 掛かっている」
獲物は、「かっちょ」よりもかなり大きい。羽には、ヒヨと違い模様がある。トラツグミだ。こんな大物は久しぶりだった。掛かっていても、いつもは「かっちょ」やメジロで、食べられるところはほとんどない。メジロとなると食べるところはまったく無いと言って良い。ヒヨはその鳴き声をよく聴くがなかなか罠には掛からない。トラツグミはその姿を見かけることはなかったが、掛かったのは初めてではない。ヒヨよりも一回り大きく、僕にとっては最大級の獲物だ。首が折れた屍骸を手に取ると重さを感じた。今日は、この一匹でも成功だ。
飛び散った羽をきれいに掃除して、餌も新しくして仕掛けのばねを戻した。
僕は、トラツグミを片手に持ちながら、残りの罠を見て回った。全部で15箇所程度の自分の罠があったが、残りの罠にこの日は、さらに「かっちょ」が一羽掛かっていた。
「ただいま、見て」
「あら、すごい」と母親が言った。
「お~い、見てくれよ」と弟たちにも言った。
羽をむしり、内臓を出した後、砂糖醤油のタレを付けて七輪で焼こう。弟たちにも分けてやることができる。
運が良く、誇らしい日であった。
地わな(ブログ:徒然なる百姓仕事と英語の話などを参照)