僕の田舎では、昔から遠浅の海岸を埋め立てて田んぼを広げていたと思われる。
この海岸近くの田んぼ域では、海岸の堤防に水門があり、その水門に一番近い部分は、汽水域の池や溝になっていた。ここには、塩分濃度が濃いせいか植物はほとんど生えていない。その上の段には、葦が生えており、場所によってはガマが生えていた。さらにその上の段でようやく田んぼとして使えるようになっていた。
春先、葦が生えている細長い池状の場所でフナ釣りをよくしていた。ここでは、ため池と違って大きなフナが釣れた。餌は、小麦粉の団子ではなく、シマミミズを使っていた。
畔道に沿って歩き、葦が生えている池を観察する。ところどころに葦が生えていない50㎝×50㎝くらいの場所がある。そこに仕掛けを入れるのである。上手く入れないと仕掛けが葦に引っ掛かってトラブルになる。時々、池を見ていると、葦が根本から揺れているような場所がある。そんな場所で仕掛けを入れる隙間があることころがポイントだ。
僕はそっと仕掛けを入れた。
「ウキが沈んだ!」
素早く合わせる。一機に釣り上げないと仕掛けが葦に絡んでします。引き上げると、20㎝を超すサイズのフナだった。水を少し貯めたバケツに入れた。気を付けないと魚がバケツから飛び出してしまう。
こうして、7、8匹の良い型のフナを釣った。バケツが重い。家に帰るまで休み休みだった。
フナは、家族もあまり好んでは食べていなかったが、父親が調理方法を教えてくれた。醤油と砂糖を使って甘辛く煮るのは、海の魚と同じだが、鱗を取らず、両面を七輪などの火で炙り、鱗を焦がすのだ。もちろん、ハラワタはその前に取る。そして、鱗が焼けてから煮るのだ。そうすると、手間も省けるし美味しい。
フナはこの方法で調理して食べていた。しかし、他の家族はあまり食べていなかったと思う。フナ釣りは、釣ることが楽しいのである。
なお、鱗をまず焦がしてから煮る方法は、海の魚だがベラ(クサビ)でもやっていた。