「おっとびっくり！」

　でかいのがハサミを大きく広げているのが見えた。

この場所は、ほとんど毎年カニが入っている場所だ。砂地に大きな岩が埋もれているような場所で、岩と砂地の隙間部分に大きな空洞ができていて、空洞の前の砂地は掻き出されており、盛り上がっているし色も少し黒くなっているからカニの巣と分かる。

他に先客がカニを獲っていなければ居る確率が高い場所だった。今の潮の状況では水深は1.5ｍ程度なので僕にとってはそんなに深い場所でなかった。まずは一潜りしてカニがいるかどうかを確かめた。大きいのが居たのだ。

ガシャガニと呼んでいたが、大きくなるとそれとも種類が少し違うのか、赤黒くてハサミがでかい大きいカニは、自分の巣を持っている。その巣は、毎年ほぼ同じ場所にあったので、カニ突きをする子供達は幾つかの場所を知っていた。その一つがここだった。今日は運が良かった。先客がいなかったのだ。水中メガネを通して見るカニはもの凄く大きく見える。

水中モリのゴムを伸ばして突く準備を行い、大きく息を吸って潜った。ハサミを広げている真ん中、丁度口辺りを突くのが上手く突くポイントだ。左手で岩の端を掴みながら体制を整えてきちんと狙って打った。

「びしぃ」と刺さったような音が聞こえたようだ。そしてモリ先で暴れている感触が伝わった。穴の中は砂が舞い上がってカニの姿は見えにくくなったが、慎重にモリとカニを岩の下から引きずり出した。そして、モリ先にカニを付けたまま、陸の部分まで少し泳いだ。

突いたカニを陸上で見ると、水中で見たほど巨大ではなかったが、大物だった。小さいのも何匹が採れたので家に帰ったら、母に湯がいてもらおう。