1950~2024年、田舎生まれの体験記など

エビ獲り

 家の近くにタブと呼んでいた汽水の大きな池があった。70m×70mくらいの広さはあったが、深さは、深いところでも1mはなかったと思う。

 このタブでは、ハゼ、ウナギ、ボラ、チヌなどが釣れて、子供の遊び場にもなっていたが、大人にとっても漁場の一つになっていた。

 夏が近づいていた頃であった。友達が言った。

 「タブで夜、エビが獲れるそうだ」

 「エビ!」

 大人たちが獲っているとのことであった。エビは、僕の田舎では貴重なもので、滅多に獲れるものではなかった。甘辛く煮たりすると美味しいことは知っていた。

 「どうして獲るの?」

 「カンテラで照らして、エビ用の網で掬って撮るのさ」

 僕は物凄くエビ獲りに行くたくなった。父親に相談した。

 子供がカンテラを使うのは危ないし、エビ用の網も家にはないと父親が言った。それでもどうしてもエビ獲りに行きたいと思った。

 父親は懐中電灯を使うことを提案してくれて、エビ用の網も買ってくれることになった。

 ある夜、ついにエビ獲りに行くことになった。

 夜、タブに行くと、既に何人かの大人が獲っているようであった。カンテラの灯りが見える。僕は、タブの浅いところから懐中電灯を照らして入った。

 懐中電灯の先に、エビの目が光っているのが見える。エビはもの凄く動きが素早い。エビの気付かれないように、エビのしっぽの方から網をそっと近づけていき、すばやくかぶせる。なんどか失敗をしたが、少し要領が分かってきた。

 その夜、十数匹を獲ったと思う。家に帰り、父親と母親に見せた。

 翌日、母親が甘辛く煮て食べさせてくれた。獲った時は大きなエビだと思ったが、煮たものは、5~6㎝だった。

 それから、カンテラを父親が近所から借りてきてくれたこともあったが、何度かして長続きはしなかった。

 エビの種類が特定できないのは、残念である。

カンテラの写真がなかったので、原賀さんの本(ふるさと子供グラフティ 新装版)より引用させていただいた。
カンテラ(原賀隆一:ふるさと子供グラフティ 新装版 クリエイト・ノア刊 より引用。
     何度も書くが、昔遊びに関しての素晴らしい本。2010年に私はサインをもらった)

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