家から数十m離れたところに、小さな川があった。ダンべ(団平船が通っていたことからが名前の由来か)川と呼んでいた。川と言っても感潮域の部分で、潮が満ちてくると、水深が1.5mほどになるが、引くと足首ほどの深さで流れができる程度の川であった。川の上流には、汽水の池もあり——タブと呼んでいた——引き潮時には、そこに溜まっていた海水も流れてくるので、かなり海水に近い水が流れていたと思う。
川の護岸は、ほぼ垂直の石積みでできており、護岸の上からは川底の様子がよく見えていた。潮が満てくると川にはたくさんの小魚であふれていた。ボラの子、チヌの子、ドンコ、ハゼ、時にはウナギやツガニも見えた。ボラやチヌの成魚を時には見えたが、この川で成魚が釣れることはまずなかったと思う。
ハゼ——マハゼと思われる——は、群れていることはなかったが、護岸の上から丹念に探していくと5~6匹程度は釣れることがあったと思う。ドンコと呼んでいた、人の指サイズのハゼ科と思われる小魚はたくさんいて、直ぐ釣れてはいたが食べている人はいなかったと思う。ハゼは煮付けにするともの凄く美味だった。
この他、ハゼを探していると、ツガニが見つかることがあった。慌てて家に戻り銛を持ってきて狙ったりしたが、あまり上手くいかなかった。
なお、この川は大雨の時には濁って、梅雨時の夜にはウナギも釣れた。