家から小学校へ通う道は、二通りあった。
一つが山道と呼ばれていたもので、昔から使われており、小山の中に昔からある人道で、家のある集落と小学校のある集落を結んでいた。もう一つは、海岸道で海岸沿いに集落と小学校のある集落を結んでおり、この道は小山を迂回するようなルートになっており、山道の倍以上の時間が掛かっていた。従って、子供たちは、大抵、山道を登下校に使っていた。
この山道は、家からは山道に差し掛かると、急な登り坂があり、登ったところではしばらく林の部分の平坦に切り開いたところを抜けて、畑の林の境界部分を下って、人家がまばらに出てくる部分をさらに下って、小学校のある集落の中心部分に繋がっていた。
冬のある日、山道を使って学校から家に帰っていたとこと、林の中から「ガサガサ」と音がした。小鳥の音としては大きく、人の音としては小さかった。
「あっ、何かいる」
僕は目を凝らして音の方向を見た。
「ヤマドリだ!」
僕は、山に罠を仕掛けて小鳥を獲っていたが、ヤマドリは最高の獲物で一度も獲ったことはなかった。捕まえられるとは思わなかったが、僕は林の中に入って。
追いかけて行くと、飛んでは逃げない。歩いて逃げるだけだ。手を伸ばしてもうすぐ手が届く程まで近づけた。
しかし、子供に捕まる程甘くはない。しばらく追いかけたが最後は遠く離された。
ヤマドリは登下校の山道で時々見た。
キジは滅多に見なかったが、罠掛けの場所を探して家の近くの海岸に近い山に入って時、少し開けた場所で突然、出くわしたことがあった。オスのキジでもの凄くきれいだった。ちょっとの間だけ目が合ったと思うが、直ぐ飛んで行った。
ヤマドリやキジの魅惑的な姿は、今も思い出すことができる。