僕は、T叔父の釣りに同行していた。
その日は、風が強く時化模様であった。そのためか、少し早めに帰るようにしていたと思うが、叔父の船の船着き場に戻る途中だったと思う。
急に、一艘の別の船とすれ違うようになった。昔だから無線も互いになかった。叔父が船を操作して両者は話が届くほどの距離まで近づいた。相手の船にはエンジンが付いていたと思う。
何を話しているか僕には分からなかった。
どうも漁の結果の情報交換のようだと思ったが、急に物々交換が始まった。こちらは、釣り針を提供したようだ。その代わりに相手はその船が獲った「生きたイワシの子」を沢山くれた。
その後、両船は直ぐ離れた。
叔父と僕、そしてもう一人の叔父が乗っていたと思うが、その3人で物々交換をして得たイワシの子を茶碗に入れ、醤油を掛けて食べた。
ご馳走と言えば、この時の船上での醤油を掛けたイワシの子が一番と思う。