僕らの家族が住んでいた家——私にとってはタブの傍の家から引っ越した2番目の家であった——は、町営住宅の一つであったが、周囲はポプラの木で囲まれていた。
ポプラは、北海道大学の並木道が有名であるが、何故か長崎県の僕の田舎にも小さいころはあちこちで見ることができた。
ひょろっと伸びる木なので木登りには不向きだったが、父親が植えたイチジクの木とこのポプラが一番身近な木だった。
梅雨が明けて夏が来ると、このポプラの木には、クマゼミが群がって「ワシ、ワシ、ワシ……」とうるさく鳴いていた。
セミ取りは、子供にとっては恒例の遊びだったが、僕たちは、クマゼミの他、アブラゼミとニイニイゼミを獲っていた。
クマゼミが一番大きくと魅力的だったが、そのセミが家の直ぐ傍にたくさんいたのだ。アブラゼミはポプラの木には少なかったように思うが思い違いかも知れない。アブラゼミは、広葉樹に多くいたように思うが、こちらもよく採っていた。
今でもクマゼミの鳴き声を聞くと、ポプラの木を思い出す。
何故かしらないが、最近では九州ではポプラの木をあまり見かけないように思われる。