『ペスト』は、カミユの『異邦人』の次ぐ、小説の第二作ということである。1947(昭和22)年に発表されたとのことであるが、手元のある新潮文庫の宮崎嶺雄訳の『ペスト』は、1969(昭和44)年に発行されている。
異邦人を読んだ後、カミユの名作ということで、引き続き読んだと思う。
今回のコロナ渦は、日本では2020(令和2年)の1月から始まったが、状況が近似していることで、コロナ渦の間、かなり読まれたらしい。
私が、最初の読んだ大学時代の頃(1973(昭和48)年前後)は、コロナ渦など夢にも思ってなく、深刻な疫病との闘いや街の閉鎖時の心理状態というよりも、アルジェリアの地方都市の「オラン」の描写や医師リューと友人タル―の海水浴のシーンなどが気に入っていたので、その辺りは繰り返して読んだと思う。そして、話の中で、『異邦人』の主人公が犯した殺人事件のことも、登場人物の会話などの箇所で出てくる。
「オラン」は、『異邦人』の舞台の「アルジェ」から、列車で西に4~5時間の場所に位置している。私の『モラトリアム ヨーロッパ旅行記1975年』に書いているとおり、アルジェからの日帰りではあったが、オランも訪問した。
この記事も書くために、読み直してみたので、大学時代の頃の影響というよりも、現時点での感想を幾つか書いてみたい。
① とにかく大作であり、かつ何べん読んでも奥が深いと思われ、この記事を書いた後でもまた読んでみたい。
② 登場人物が多数・多才である、主人公・リューと友人タル―の他、
・老市役所吏員・グラン
・グランとリューが助けた、犯罪歴のありそうなコタール
・新聞記者のラングール
・パヌルー神父
・ぜんそく病みのじいさん
・最初の犠牲者として描かれるミッセル氏
・リューの妻や母親などなど
が登場するが、これらの人々の生活や考え方の描き方が大変興味深い。
③ 最初の鼠の死が出てくる、以下のシーンは不吉の予兆となり印象深い。
・・・・・”医師ベルナール・リユーは、診療室から出かけようとして、階段口のまんなかで一匹の死んだ鼠に つまづいた”。
④ リューが新聞記者のラングールから取材協力を求められた時の会話の一節
・・・・・”自分の暮らしている世界にうんざりしながら、しかもなお人間同士に愛着を持ち、そして自分に関する限り不正と譲歩をこばむ決意をした人間の言葉である。”
⑤ タル―がリューに保険隊の組織を提案する時の二人のやりとりの内容は濃いと思う。
以上は、感想のほんの一部である。
ぜひ、読んでおられない方は、ご一読をお薦めしたい。